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執筆者の写真角谷仁宣

2020_1225

<時代の空気を利用する。>

楽曲を組み立てて行くときの要素として根幹となる作詞、作曲、アレンジ、アレンジはキャンバスに絵を描く様なもので個々の音の配置、音色でキャンバスを彩ります。

絵画も楽曲も感情を揺さ振る様なものであることが一つの成功だと思います。そこでノスタルジーを利用したりもできます。


ドラム、ギター等のアコースティック楽器はもちろんですが、ビンテージシンセの音色、50年代、60年代、70年代、80年代、90年代それぞれの時代特有な音があります。その音を聴いただけでその時代を感じられたりします。

私の場合、最初に意識したのはサンプリングやループを使い出した時です。昔の音源からサプリングしたりループを切り出したりすれば、時代の空気を利用したりギミックとして用いたりと云う事が出来ます。


次の経験はレニークラビッツが登場した時です。黒いジョンレノンとの異名が付けられていたくらいで、サウンドもジョンレノンの音を再現していてかっこいい!その音の再現性に当時一緒に仕事をしていた周りの皆さんも衝撃を受けていました。

どうやったらこんな音が作れるのか?で、探りにニューヨークに行きました。プロデューサーヘンリーハッシュのウォーターフロントスタジオ。そこにはビートルズやツェッペリン、

モータウン等を録った当時のビンテージ機材がずらりと並んでいてスタジオも当時のアコースティックを再現出来る様に設計されておりました。あの音はヘンリー ハッシュのオタク的拘りの賜物でした。


その時に録ってきたのが「奇跡の星」のオケ、その後ミスターチルドレンのアルバム「深海」はそこで録音されました。担当エンジニアの平沼浩司さんはヘンリー ハッシュと相談しながら音を組み立てて行きました。

全レコーディングが終わってから帰国した平沼さんは手帳にビッシリと音作りのノウハウをメモしてして宝物の様に持ち歩いていました。


その後、平沼さんにお願いしてビートルズの初期、中期、後期の曲の音色をコピーして貰い曲に合わせてプレイも完全コピーすると云う企画を実行しました。ドラマーは伊藤史郎さん、スタジオは川添さんのゼロ スタジオ、

音の再現性に釣られて伊藤さんのプレイにも熱がこもり、左利きの癖があると云うリンゴのフィルを完全コピー、出来たドラムトラックは原曲と完全にシンクロしてまるで原曲のドラムトラックの様でした。

出来た物は60年代のドラムのサンプリングCDとして売り出されたり、自分でもループや単音を切り出して使っております。


皆さんももう一味欲しい時、時代の空気を隠し味にしてみたら如何でしょうか?とは云えきっと10年後、20年後、数十年後、現在の音は2020年代の音としてノスタルジーを感じさせることと思います。


JSPA監事 角谷 仁宣

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